彼は敵国と外交している時に変な薬を盛られ、一週間寝込んでいた。

その薬というのがどういうのか分からなかったが、体に異常がなかったため今は安静にするだけで済んでいる。


「また地図上から国がひとつ消えたんか?」

「まあ、はい」

「はあ……大袈裟やな」


ぎこちなく笑った笑顔は、少し嬉しさも混じっていて本当は嬉しいということが手に取るようにわかった。


「……とりあえず、クッキーはここら辺に置いときますね」

「はは、懐かしいわ」


お見舞いにはあの日一緒に食べたクッキーを置いておいた。


「また来ます」

「……っなあ」


ある程度喋り終わり、さて書類しようと思ったところ。

服の裾を控えめに引っ張られた。


「……やっぱ、なんでもないわ」


思えばこの日から豚平さんは、おかしくなっていったのかもしれない。