スノーホワイト・テリトリー




ニャァ、とどこかで猫が鳴いた。彼女は一束の三つ編みを靡かせながら、退いた青年をまっすぐ見つめた。


弱まる語尾とは裏腹、瞳には強い意志が宿っているように思えた。


この人、地味にかわいい。
今では “地味” どころか世界と攻防している有り様だが、当時の心がそう放ったことは明白。


状況も正しく理解できていたかは定かではないが、とりあえず『ありがとう』と首を垂れた。


『つか……なんで俺の名前、知ってんの』
(かわいいけど、地味にこえぇわ。しかもなんだよ、捕食って。ワードがこえぇわ)


しねよ俺、となじりたくなるが、こちらも鮮明に記憶が爪を立ててくる。‘思想・良心の自由’ があれど、いまその思いを抱けば間違いなく死刑だ。


白雪が白雪に執行する極刑は、ひどく残酷に違いない。


『なんで……』

『いやだって、クラス違くない? 俺ら。まだ入学して一ヶ月くらいだし』