「滾るな」
新緑がまぶしい季節。
お日柄も良く、昼休みの教室から見据える中庭の景色は、例によって絶景である。
「白雪。お前、気持ち悪い」
三階の窓際、視界の端で揺れるカーテンを遮るように、邪魔者が現れる。
バカ、どけ、天使が見えねぇだろうが。
「さっきから独り言、ずっと漏れてんぞ」
「べつに、隠してもないけど」
「だろうな。……今日も今日とて藤沢教」
「勝手に教粗にすんな。信者が増えたら困んだよ」
手すりに乗せた腕に体重をかけながら眉をひそめると、佐々木は大きく息を吐いて苦笑した。
「藤沢さんってけっこう隠れファン多いぞー」
「……知ってるっつーの」
「てーか、なんでそこまでこだわるかねー。美人だけど、ちょっと地味じゃね?」
「あぁ?なに言ってんだよ、天使だろ」
「気持ち悪」
藤沢さんの良さが、お前みたいな不良に分かって堪るか。