スノーホワイト・テリトリー



偉そうに彼女を俯瞰(ふかん)した。


そうでもしなければ、鳴りやまない心音に動揺を隠せなかった。


『……名前は』

『え?』

『名前。教えてよ』


もう少しマシな言い方はなかったのか、と思い返すだけで反吐(へど)が出る。


しかし、このときも動揺を隠すのに必死だった。


佐々木からナンパの心得でも教授してもらうべきだったか、と血迷ったくらいに。


『藤沢、と申します』


スカートの前に組まれる小さな手。


それに触れられた淡色の髪が、ピアスの貫通した薄い耳朶(みみたぶ)が、確かに疼いた。


『藤沢……さん』

『はい』

『藤沢、何さん?』


幼稚園以来、女子を下の名前で呼んだことのない青年は、再び血迷った。


彼女はすぐには答えず、代わりに弁当の入った巾着からタッパーを取り出した。


『……ん?何これ』


中身に入っていたのは、濃いグリーンに包まれた淡いピンク色。