スノーホワイト・テリトリー



この人は、案外悪い方にも振りきれるのだろうか。


先ほどよりも一層輝きを放つ瞳に、不覚にも吸い込まれそうになった。


『……そういえば、今って授業中じゃん』


均等に結われた三つ編みに、覚えた違和感。ようやくその正体に気がついて、思わず立ち上がる。


瞬間、下から及ぶ上目遣いの破壊力に(やっぱり小悪魔……?)と、一歩退いた。


『そうですね。ちょうど、五時間目……私のクラスは数学です』

『うちは生物……いや、そうじゃなくて、』

『はい』

『———……サボるの?』


そんな風貌で? とは辛うじて吐かなかったが、汲み取ったらしい彼女はふふっ、と笑った。


『数学は嫌いなんです』


人は好きだけど、と前提しているつもりだろうが、そこ、カテゴリーが違うぞたぶん。


ツッコミたいのは山々、それでも唇を結んだのは、彼女が木漏れ日のヴェールを纏った “天使” に見え始めたからに違いない。


ギャップ萌え、という俗物は、確かに存在していた。