エヴァが死んだのは私とザックが十歳の時だった。
エヴァはまだ八つだった。

ザックは鍛冶屋の息子で、よく城内を出入りしていた。

お父様もお母様もコルデシー家の息子ならばと許しを得てくれた。
そして日が暮れるまで三人で遊んだのだ。


エヴァも私も薔薇の花が大好きだった。

それも城の中に咲くような薔薇ではなく、森に咲く野ばらが一等好きだった。


「お姉様、森の野ばらは綺麗ね。
だってお日様の光に照らされた木々の若葉の色が薔薇に移って、ほら!」


エヴァは一輪の薔薇を持って言う。


「緑色の薔薇に見えるでしょう?」


私は笑った。


「そういうエヴァの顔も緑色よ。」


「お姉様だって!」


他愛も無い会話。
そんな毎日が楽しくて仕方なかった。


幼い命の火が消えたのは、そのすぐ後だった。