アリスは言葉を失った。
エヴァの前空きから覗いたのは、人間の肌では無かった。

犇めき合う歯車と、色とりどりのケーブルコード。

それはまさに機械以外の何物でも無かった。


「御免なさい、お姉様。」


エヴァが城の部屋でアリスに触れた瞬間、彼女が何者なのかを悟った。

体温の通わない冷たい手―――。
人間ではないとわかった。


しかしあのような機械・・・ロボットだとは想像もつかなかった。


「ずっと黙っていて、御免なさい。」


リルは俯き、涙を流し、頭を抱えていた。
その手を取って握るエヴァ。


ああ、なんと冷たい手なんだろう・・・。


エヴァはもういないのだ。


「私は人形だけれど、心は本物です。

ザックとお姉様と三人で暗くなるまで遊んだこと。
お姉様が一緒にお勉強を手伝ってくれたこと。
星を一緒に見たこと。

全部、全部覚えています。


辛い思いをさせて御免なさい。
私はもういないけれど、これだけは魂だけは本物です。

心から、お姉様を愛していたと。
その言葉だけは偽りがありません。

だからどうか真っ直ぐ前を向いてください。」


リルは顔を上げた。


「エヴァ・・・。」


顔をくしゃくしゃにさせて涙を零す。


「私も、お前を心底愛していたよ・・・。」


リルはエヴァを抱きしめた。