“月が頭上高くに輝く頃、必ず貴方の所へ行きます。
私の部屋の真下の薔薇が咲く庭、そこで待っていますから。”

エヴァはそう言った。


もし嘘だったら?
実はそこに行けば衛兵達が待ち構えていて、アリスを殺そうと企んでいたら?

そんなことは思わなかった。

彼女の瞳に嘘は無い。
それがわかってしまったからだった。


「ねえ、ハニー・・・ハニーは知ってた?」


アリスはぽつりと呟いた。

城の近くの森の中で二人は待っていた。
エヴァが来るのを。


「何をですか?」


“知ってた?”だけではやはりわからないか・・・。
アリスは内心ほっとした。


「エヴァ・イニーネのことですか?」


アリスは目を見開いた。


「知ってたの!?」


「否、ザックが私に話してくれましたよ。
しかし我々が知ったとてそれはどうでもいいことなのです。

重要なのはあの三人が、リル・イニーネがどうするかということなのですから。」


「でもそれじゃ・・・!!!あんまりじゃない・・・。」


アリスはぐっと涙をこらえた。

薔薇が咲き乱れる庭に、エヴァが現れる。


「さあ、行きましょう。姫君がお待ちです。」


アリスは強く一歩、踏み出した。