アリスの頭の中には既に一つの作戦が練りあがっていた。


双子の姫君の横には長蛇の列が並んでいる。
それは贈り物をどうしたらいいのか尋ねる女中の列で、その列にアリスは何食わぬ顔で並んでいた。

誰も疑いの目は向けない。

女中自身も、双子の姫君も、女王と国王すらも。


この列に並びリル・イニーネに接触する。
そして大臣が呼んでいるだとかなんとかうまいことを言いのけ、中庭までおびき寄せる。

そうすればアリスのやるべきことは終わるのだ。
簡単なことではないか!

アリスは心の中でほくそ笑んだ。


段々とアリスの目の前の女中達が消えていく。
自分の番が近付く。

式場の中央では姫君の為であろう、ダンスを踊る者達がいる。

華やかな雰囲気、軽やかな音楽、しかしリル姫はクスリとも笑っていなかった。


ついにアリスの番が来た。
献上物を差し出し、言うべき言葉を発する。


「えっと・・・あ、アランドルク国の王子、ディレオⅢ世様からお祝いの捧げ物です。
あっ、御座います。」


エヴァ姫はにっこりと微笑んでアリスに囁く。


「有難う。お部屋に運んでおいてもらおうかしら。
ねえ、お姉様?」


リル姫は表情を一つも変えず、ただ目線だけをアリスに向けた。


「・・・ああ、そうしてもらおうか。」


「かっ、畏まりました。」


そうしてアリスは中庭に呼ぶための嘘をつこうと口を開く。

その瞬間だった。







「しかし女中よ、貴様に私の部屋がわかるのかい?」








リル姫が、ニヤリと笑った。