水しぶきをたてながらばしゃばしゃと歩く。
それがなんとも楽しかった。

子どものようだと少々の恥じらいはあったが、この温和な時間が楽しくてたまらなかった。


「アリス嬢、あまりはしゃぎすぎないようにして下さいよ。」


その声にアリスは振り返る。


「うるさいなぁ。ハニーもこっちに来てみてよ!」


するとハニーの形相が変わったのがわかった。


「アリス嬢!!!後ろにっ!!!」


「へ?」


すると自分をすっぽりと包むように影ができ、背後に気配を感じた。
アリスは急いで振り返る。


「っっっ!!!」


言葉を失った。

アリスの身長の二倍ほどもあろう大男がアリスの背中に立っていたのだ。


「アリス嬢っ!今助けにっ・・・。」


ハニーがアリスのもとへ向かおうとした瞬間、何者かが首に手を回す。
がっしりと摑まれハニーは身動きができない。

しかし杖を握り締め、呪文を唱えようとした瞬間に制された。


「おい、何か妙なことしやがったらあのお譲ちゃんの命は無いぜ。」


ハニーは歯を食いしばった。


「何、俺たちはお前達を殺そうなんざ思ってない。
黙ってついて来れば何もしやしねぇ。

ほら、着いて来い。」


ハニーは後ろ手にされて連れて行かれ、アリスは鳩尾を殴られて気絶していた。

黙ってついていくことしかできない。
ハニーは苛立ちながらも言うとおりにするしかなかった。