リル・イニーネは苛立っていた。

どうしてあの娘は私の神経を逆撫でするのか。
例え好意でしているとして、リルには苛立ちと嫌悪の種でしかなかった。


あの薔薇の花もさしずめ侍女にでも摘ませたのだろう。

棘のある薔薇、それを摘むのならば指先は少なからず傷つく。
しかしエヴァの手は傷一つ無かった。


そんな花などいらない。

踏みつけて当然だとさえ思った。



リルはどうしてもこの国の女王になりたかった。
フェム国の権威を握りたかった。

もう理由さえ忘れてしまったが昔からそう願っていたのだ。

今、国の民はエヴァが女王になることを望んでいる者が殆どだ。


民の思い通りにはできない。


例え父と母が同じようなことを望んでいるとしても。


そう、だから憎らしいのだ。
あの娘が、妹が、憎くて憎くて堪らない。

できることならば刺し殺してしまいたい。

けれどそれはできない。



何としてでもこの国の頂上に立たなければならないのだ。