悲鳴がこだました。

ヴァネッサの取り巻き達が慌てふためき、アリスを引き剥がそうとする。
けれど頭に血が上った彼女にはそんなものはきかなかった。

馬乗りになったアリスは襟元を締め付ける。


「あんたに何がわかるの!?親の脛を齧って生きてるだけのくせに!」


ヴァネッサは口をぱくぱくとさせながら目を見開き、苦しそうにアリスの手を離そうと必死になっていた。

しかしアリスはぐっと手に力を入れて放そうとはしない。


「私のことは何を言われてもいいけどね、両親のことを馬鹿にしないで!!!」


そういうとアリスはぱっと手を放した。

その開放感から安心したのか、ヴァネッサが胸を撫で下ろした瞬間―――。




ガツンと鈍い音がした。



ヴァネッサの口元からは一筋の血が流れた。

アリスの振り上げた拳が当たったからだ。


アリスは荒い息を抑え、走り去った。


「アリス・ヴァレンタイン!覚えてなさいっ!
この屈辱は絶対に晴らすわよ!!!

貴方が何をしたのか身をもって知るといいわ!!!」


そんな怒鳴り声がしたが、アリスは振り切るように走った。



涙が風に乗って消えていった。