「ふっ・・・えぐっ・・・ひっく・・・。」


ハニーはアリスを抱き寄せた。

腕の中で小さく震える少女は選ばれし神子でも無ければ、プレザンスの行く末を担う者でもなかった。



たった一人のいたいけな少女だ。



ハニーは思い出したように胸中で呟いた。

アリスは単なる一人の人間でしかない。
その少女に重く苦しい試練をのしかけているだけにすぎない。


「アリス嬢、心中お察し致します。

しかしこれからはさらに辛く重い試練が待ち構えています。
ご覚悟はおありですか?」


するとアリスは涙を拭いながら言った。


「当たり前でしょ!
こんなことでへこたれた訳じゃないから、安心して。」


なんと強いのか。
この芯の太さ、意志の強さ、気高さ・・・あの方に瓜二つだ・・・。

この瞳が全てを物語っている。


「アリス嬢、この先何があろうとも命を落としてはなりません。
享受によりプレザンスはアリス嬢と一心同体、つまりはイコールで結ばれる関係になったのです。
アリス嬢の死によってプレザンスは崩壊、そして他の世界にも影響を及ぼします。
お忘れなきよう。

そしてこれから出会う人間、誰一人として信用してはなりません。
言葉巧みに貴方を騙し、宝珠の力を奪おうとするものがいるかもわかりませんから。」


アリスはその言葉に寂しさを感じた。


「それって、ハニーも信じちゃいけないってこと・・・?」


ハニーはゆっくりと瞬きをした。


「ええ。」


なんとも言えない感情が、アリスの中にわきあがった。