ヴァネッサ達はほくそ笑みながらもアリスが取り乱すのを待っているようだった。

引っ掛かってたまるか。

アリスは奥歯を噛み締めた。
まんまと策略にはまるほどアリスも馬鹿ではない。


「だから何?」


さらりと言ってのけるアリスを見、ヴァネッサは面白く無さそうな顔をした。


「貴方が捨て子だなんて初耳だわ。滑稽ね、アリス・ヴァレンタイン。」


何が滑稽。何がそんなに面白い。


「親に捨てられた挙句、あんなに意地汚い貧乏な人間に拾われたなんて。
彼女ね、私がほんの少しのお金をあげただけで貴方のことをベラベラ喋ってくれたわ。」


私も好きで拾われたんじゃない・・・。
でも一応、育ててもらったことには感謝している。

これでも恩は忘れない性質だから。


「貴方の親も最低なものね。自分の子どもを捨てるなんて。」


五月蝿い。黙れ。

ヴァネッサは随分と楽しそうに喋っていた。
それがどうしようも無く腹立たしい。


「どうせ貧乏で子どもの世話一つまともにできなかったんでしょうね。」


やめろ、やめろ、やめろ。


「けれど愛があれば捨てるなんてことはしない筈よ。

アリス・ヴァレンタイン、貴方って愛されていなかったのね。」







そこで、アリスの中の何かが音を立てて切れた。

ブチンと音がしたのをアリスは覚えていた。


気付けばヴァネッサの襟元を掴み、床に押し倒していた。