英知の塔が目前に迫ると、今まで邪魔な程に生い茂っていた雑草がすっかりとなくなっていった。

そこには砂漠が広がり草一つ生えていない。
どことなく寂しい空気が流れた場所だった。


寂れた砂漠を歩き、黄色い砂塵を避けながら、アリスとハニーは歩みを進めた。


「ここまで来れば英知の塔は目と鼻の先、もう少しの辛抱です。」


既に月は沈み、太陽が顔を出していた。
空が白んでいる。

まるでここは時が止まったようだった。


「行きましょう。入り口はすぐそこです。」


塔は目の前に聳え立っていた。

アリスの想像では、塔というのは円柱で真っ直ぐ天へと伸びている物だとばかり思っていた。

しかし英知の塔は少々形が異なる。
円柱というよりは台形に近い、少々崩れて歪んだような形をしている。


外壁などは所々崩れており、まるで遺跡のような雰囲気さえする。
風化した跡も所々見られる。

触れてしまえば、すぐに崩れてしまいそうだった。


「ここまで来れば宝珠は目前、頂上までの辛抱です。」


塔の入り口にドアのようなものは無く、がらんと入り口は無防備に晒されていた。
確かに頂上までは大分歩かなくてはいけなさそうだ。

アリスは塔の中に足を踏み入れた。