それはなんら変わりの無い、いつも通りの日常の断片にすぎなかった。
何も変わったことなど無かった。

アリスはいつも通り起床し、トマトのスープを飲み、登校し、学校生活を送り、ヴァネッサに嫌味を言われ、帰路に着こうとしていた。

そこであの女がアリスを引きとめたのだ。


ヴァネッサ・イーディスとその仲間たち。


意地の悪い、アリスを甚振ることでしか楽しみを得ることの出来ない低脳な人間達。

アリスは引き止められても無視して歩き続けた。


「待ちなさいよ。」


西日の差す教室。
そこにはアリスとヴァネッサ達以外には誰もいなかった。


「私、貴方の小母様から面白い話を聞いたの。」


アリスは足を止めてヴァネッサを睨みつけた。

ヴァネッサ達はクスクスと笑っている。




「貴方、拾い子なんですってね。」




アリスの心臓がドクンと音を立てた。
嫌な汗が滲み出てくる。

親に捨てられたという事実は誰にも話していなかった。

それは小母も同じで決して誰にも言うことは無く、胸に秘めていたのである。


それをヴァネッサが知ってしまった―――――。