様子がいつもと違う。

ハニーを見た瞬間にアリスは思った。
何かに追われているような、急かされている様な感じがした。


「アリス嬢、お目覚めでしたか。」


アリスは訳も分からぬままベッドから這い出た。


「何かあったの?」


するとハニーは部屋の窓を開ける。
そしてアリスを抱きしめ、部屋の隅に束ねられたカーテンの中に潜り込んだ。


「動かず、声も出さぬようお願い致します。」


「えっ!?一体何があったの!?」


「静かに!」


するとどこからともなく足音が聞こえた。
それは一人もしくは少人数のものではなく、地響きがしそうなほどの足音だった。

その速さから急いているのが読み取れる。

それらの足音はアリスの部屋のドアを乱暴に開け放ち、中へと入って来た。


「おい、いないぞ!クイーンに報告しろ!」


「見ろ、窓が開いている。外だ!外へ回れ!!!」


すると足音は遠のいて行った。



アリスの心臓は早鐘を打っていた。
先程の声、おそらくトランプの兵隊達だ。

そしてクイーンに報告・・・もしや―――。


「ハニー・・・もしかして私たち・・・。」


「キングダムAが寝返るのも時間の問題とは思っていましたが、少々早かったようですね。」


アリスの予想通り、二人は追われる身となったのだった。