゚・*:Plesance Sinfonia:*゚・

その顔に、態度に、雰囲気に、言いようも無い不信感を抱いた。

人を見下したようなつり上がった目。
きゅっと結んだ薄い唇。

赤と黒の悪趣味で無駄に豪奢なドレス。
身に着けた数々の宝石からクイーンの傲慢さが伺えた。


「選ばれし神子よ、名は何と言う。」


「あ、アリス・ヴァレンタイン。」


「アリスよ、そなたが何故選ばれたのか、それを今から説明しよう。」


“選ばれし者”としか聞いていなかったが、今それが何なのか解明されようとしている。
アリスは息を呑んだ。

ハニーの言葉が一瞬頭を過ぎる。


“これから貴方に襲い掛かる運命は、決して楽なものではありません”


その言葉を聞いたときに悪い予感はしていたのだ。
それがどんなものかはわからないが、ただ漠然した恐怖を感じた。


「この“プレザンス”という世界は嘗て一つであった。
ある一人の人間がこの国を統治していたのだ。

広大な地を、膨大な数の人間を、たった一人の力で治めていた。

問おう、アリスよ。
それが並大抵の人間に可能なことであろうか?

そなたはどう思う。」


アリスは正直に答えた。


「普通の人間にはできないことかと、思います・・・。」


「賢いな、子どもよ。
そう、その人間にはある力が宿っていたのだ。

その力こそ“プレザンス”の源。

それを人は“悉皆の宝珠:プレザンティア”と呼んだ。」


「シッカイのホウジュ?」


クイーンは口角を上げる。


「宝珠を授かることができるのは限られた人間のみ。
そこいらの兵隊や、勿論私でも不可能なことなのだ。

しかしたった一人、宝珠を授かることの出来る人間がいたのだ。」


もしかして―――。

アリスは唾をごくりと飲み込んだ。


「それがアリス・ヴァレンタイン、そなたなのだよ。」