゚・*:Plesance Sinfonia:*゚・

その言葉をすんなりと理解するのには時間がかかった。

かつて物置のような小汚い、家とも呼びがたい場所に住んでいたアリス。
しかし今では立派な部屋を貰い受けたのだ。


「まずは湯船に浸かってきては如何ですか?」


そう言ってハニーはバスルームへと案内した。

大理石の湯船に金で装飾されたシャワーヘッド、蛇口、鏡。
湯船にはすでに湯が張ってあった。


「すご・・・。」


「タオルや必要な物はこちらに置いておきます。
全てお好きなようにお使い下さい。

それから私は部屋にいますので、何かあった時はすぐに呼んでください。」


ハニーはそう言ってバスルームから出て行った。



正直に言えば、風呂にきちんと入ったことなど無かった。
いつも体や髪を洗うときは冷水を使っていた。

真夏だろうと、真冬であろうと、体を打つのは冷たい水。

それにどこかで拾ってきたような安い石鹸。
それで全身を洗っていた。


着ていた服も見れたものではない。

所々に染みや虫食いの穴が空いたくすんだ茶色のワンピース。
アリスがいた世界では時代遅れも甚だしかった。


ヴァネッサ達は流行の最先端をいくような服を着ていたことを思い出す。

刺繍が綺麗に施されたコルセットに、膝丈のスカート。
スカートにもブラウスにも装飾的なレースがあしらわれているのだ。

それをいつも羨んで見ていた。


指をくわえて見ていることしかできなかった。




けれど今は違う。

こうして最上級とも言える待遇をされ、こんなにも豪華で広い湯船に浸かっている。

アリスはザブンと頭まで潜り、顔を出した。
なんて幸せなのだろう。


自然と笑みがこぼれた。