゚・*:Plesance Sinfonia:*゚・

遂に聳え立つ城の目の前に来た。

見上げれば首が痛くなるほど高い城は、赤と黒と白の三色で構成されたなんとも悪趣味な城であった。

アリスがかつて本で見た城とは全く違ったイメージだ。
形はなんだか楕円のようで歪んだフォルムを持ち、それがいくつも重なったような、不恰好な城だ。

気品の欠片さえ感じられない。


「さあ、キングダムAの女王にご挨拶に参りましょう。」


城の扉の前にも当然ながらトランプ兵達がいた。
彼らはハニーに敬礼をし、扉を開けてくれた。

赤い色を主とした金色の装飾がなされた扉が、轟音をたてて開いた。


「さあ、まずはお召し物を変えましょうか。」


広い城内、高い天井、今まで見たことの無い建物。
アリスは落ち着かずにはいられなかった。




 

 城内にはいくつもの部屋があり、アリス一人ならば確実に迷うであろう。

アリスは必死でハニーの背中を追いはぐれないように心がけた。
そうしてある部屋へと促される。


小さなゲストルームのような場所だった。

生活に必要な物は一通り揃っている。
ベッドにバスルーム、それにドレッサーも。


「この国を離れるまではここがアリス嬢の部屋です。
お好きなようにお使い下さい。」


アリスは驚きと歓喜で目を大きく見開いた。