゚・*:Plesance Sinfonia:*゚・

 その奇妙な人間、否、その表現すら合っているのか定かではない。

トランプ人間はものの見事に体がトランプで、そこに手足と頭がくっついただけの生き物だ。
ハニーもヂチキという怪物も奇妙だったが、このトランプ人間も負けず劣らずと言ったところであった。

アリスはすぐにハニーの服の裾を掴む。


「大丈夫ですよ、アリス嬢。彼らはこの国の衛兵です。」


ハニーは小声でアリスに言った。


「おお!これはこれはMr.ハニー。お戻りですか。」


一人のトランプ人間が三脚から下りて言った。
手には赤い色のペンキ缶と刷毛を持っている。

トランプの数字はハートの5。

本当に奇妙で仕方が無い。


「長旅ご苦労様です。さぞお疲れでしょう。」


「お気遣い有難う。」


するとトランプ人間はアリスを見た。
自然、目が合う。


「この方が選ばれし神子(みこ)ですか・・・。」


食い入るように見つめるトランプ人間に耐え兼ね、アリスはハニーの背中に隠れた。


「アリス嬢はお疲れのようですからクイーンに挨拶だけしておこうかと。
クイーンは王室におられるのですか?」


「ええ、今日はどこにも行かれていなようですよ。」


ハニーは礼だけ言って歩みを進めた。
アリスも軽く会釈だけした。

その姿かたちのせいだけではなく、何か取っ付きにくいようなものがある。

アリスはどうも苦手であった。