一限目は現代文か…。叶華の得意な教科のやつだ。

「今日は日和さんから読んでってもらおうかしら」

「はい」

と鈴のような可愛らしい声で叶華は返事をした。そんな叶華が俺は好きだ。現代文担当の女の緑川先生はにこっと叶華の返事に返した。

そして、叶華が教科書の物語の文章を読み始めた。

「─────────綺麗な妻と穏やかに住んで……………はとても奮起して頑張り─────────。」

叶華の読むペースは俺にとってとても居心地いい声だ。叶華は俺が思った通り、綺麗な女子だ。叶華の読んだ文章に綺麗な妻とかあったな。俺の妻になってくれるのは叶華がいい。

淡々とまる読みで回ってくる。次は俺の番か…。

「──────────だが、私の妻はさらわれた。ある者の手によって消えてしまったの………だ─────────。」

俺が読んだ文章のところはとてもやばかった。この物語の展開から一気に悲しいものになるなんて。俺はその文章を叶華との関係で考えてしまい、読むのに途切れてしまった。

そして、俺の後ろへと読み順が回っていく。俺は頭の中が蒼白になった。…叶華が消える。ありえない。考えられない……。叶華が攫われるだなんて…。考えたくない。俺のだ。叶華は誰にも渡さない。いや、渡したくない。

俺は急に不安が押し寄せてきた。