一限、二限、三限と普通に教室で授業をやって、みんなが嫌な体育の1000m持久走が始まりを迎えた。持久走だけなぜか男女ともに走る。みんな更衣室でジャージに着替えて、グラウンドに出た。

4月の生暖かい季節に走るのは最適な季節だとは思うけど、ずっと走り続けなければならないのは私もいやだな。

由美ちゃんと私でペアを組んだ。ジャンケンでどっちが先に走るか決めて、私が先に走ることになった。私は男子とも走る持久走にドキドキと緊張しながらもスタートし始めた。

私は4周目で走るペースが落ち、ゆっくりと走る。ただそれでも足がもつれそうになり始めた。5周目の時に私は転びそうになった。

「キャッ」

と言って、前に倒れる覚悟で目を閉じた瞬間。私は前に倒れなかった。誰かの腕の中に抱きしめられていた。

────────か、かの、かのか………。

優しい男の子の声で私の名前を呼んでいる。ゆっくりと目を開けると、そこには兎田くんだった。

「叶華…大丈夫か？」

「…兎田くん………」

兎田くんはすごく心配そうな顔を私に向けていた。私はそんな兎田くんの顔に驚いた。そんなに心配そうな顔を浮かべてくれるなんて。

「兎田くん、ありがとう……」

私は疲れ切って、か細い声でありがとうと伝えた。兎田くんはそんな私にさらに心配げにギュッと私を抱きしめる。兎田くんの腕の中はとても温かい。でも、なんで兎田くんは私をそんな風に抱きしめるんだろう…｡