私は紳くんと手を繋いで、学校に向かう。紳くんとの関係を公にできないことはどうやら色々とあるらしい。紳くんは私にその理由を教えてくれない。私は知っちゃったら、いけないのかな…。

「ねぇ、紳くん……」

「何、叶華」

私は紳と学校に向かう坂を登りながら、聞いた。紳くんはなんのためらいもない様子で私に穏やかな笑顔で振り向く。

「紳くんはなんで秘密にするの…?」

私のその言葉に紳くんはどこか青ざめた。

「それは……いいんだよ。叶華…。叶華は知らなくていい……」

紳くんはそう言うと、私の繋いでる手を離し、先に学校へと駆けて行ってしまった。

私はどこか悲しくなった。紳くんにこんなにも近づいているように思うのに…。紳くんは私に伝えていないことがあるだなんて。

「紳くん……。どうしてなの………。何を隠してるの」

「おはよー!叶華〜〜〜っ!」

といつもより陽気で元気な由美ちゃんの声が後ろからした。

「あ、由美ちゃん。おはよー」

と私は返事をして、振り向く。すると、そこには由美ちゃんの隣りには爽やかな好青年の男子生徒がいる。私はそんな由美ちゃんに驚いた。

「由美ちゃん、その人は…?」

「気になるでしょ〜!フフフンッ」

と由美ちゃんは上機嫌に笑う。そして、「実は…」と言って間を置いてから言った。

「私の彼氏なの!」

「由美ちゃんの彼氏……!?」

私は驚いた。そして、由美ちゃんは満面の笑みで言う。

「野球部の神下(かみした) 柚希(ゆずき)くん!同級生だよ!」

神下くんは照れた顔を片手で隠しながら、ペコと頭を下げた。

「そ、そうなんだ……」

私は初めて、親友の由美ちゃんに対して恨めしい気持ちを抱いた。あんなに紳くんはダメって言って、紳くんとの私の関係も知りもしないのに否定したのに…。由美ちゃんは平然と彼氏を私に公に彼氏と言えることにも羨ましい気持ちを持った。

私はそこにいたたまれない気持ちを抱きながらも、苦笑いを続け、3人で教室に向かった。

神下くんは3組らしく、6組の私と由美ちゃんが先に教室に向かうため、神下くんは由美ちゃんに手を振りながら、前へと廊下を歩いて行った。由美ちゃんはその神下くんの行動に惚れぼれしながら、笑顔で手を振っていた。