「須山…、兎田…。お前ら、科学の実験の途中で何喧嘩してるんだよ…」

「す、すみません…」

「兎田は謝らないのか?」

「ごめんなさい…」

と学年主任の男の国原先生が紳くんと須山くんに注意をした。紳くんは澄ました顔をしていた。須山くんは申し訳ない気持ちを顔に出していた。

私はその様子をドア越しから見ていた。2人が注意されている教室は理科室の隣りの実験準備室だった。電気のついていない暗がりの中で話していた。

そして、紳くんと須山くんは国原先生に背中を押されながら、出てきた。

「日和さん…、ごめんね」

と須山くんが顔の前で手を合わせてごめんと謝ってきた。紳くんに顔を向けると、紳くんは複雑な顔をしていた。

「おい!兎田!お前は日和さんに謝らねーのかよ!お前こそきめーよ!」

「須山なんかに言われたくない……」

紳くんは怒ってきた須山くんの言葉に反感的にそう言って、キッと(にら)んだ。

私はそんな紳くんの様子に私はチクリと胸が痛んだ。紳くんがキモイだんなて言われることに私は心が痛かった。紳くんはそんなキモイ子じゃないのに。どうして、須山くんは紳くんのことそう言うんだろう。それと同時に私はこんなことを思った。

本当の紳くんを分かってくれている子はいないんじゃないかって。

私は今にも紳くんを抱きしめて、撫でたい気持ちになった。紳くんは私の大切な王子様だから。私が紳くんを1番分かってあげたいの。かわいい紳くんをかっこいい紳くんを私は優しく抱きしめたい。私が紳くんを守りたいの。