「叶華〜!おっはよ〜!」

「由美ちゃんおはよ〜!」

学校の生徒たちがたくさん通る歩道橋から小さい頃からの親友の合宮(あいみや) 由美(ゆみ)ちゃんと会った。由美ちゃんはいつも長い髪を高い位置にポニーテールにしている元気な女の子。そんな由美ちゃんは私にとって頼もしい。

歩道橋の階段を降りた所でイチャついている女子と男子がいた。同じ学校の生徒のようす。男の子が女の子を壁に寄せ、肘を付けている。壁ドンをしていた。

私はマンガのワンシーンを見ているような気持ちになった。由美ちゃんに顔を向けると、由美ちゃんはとても引いた顔をしていた。

「うわっ!叶華は見ちゃダメなとこだったんだけど。キモッ。あいつ」

「由美ちゃん……」

私は由美ちゃんの言葉に気にする。イチャついている2人に聞こえる声だったからだ。

そして、由美ちゃんは言った。

「さっきの男子、兎田 紳だよ!学年一イケメンって有名だけど調子乗りすぎ。美人で有名で生徒会長の片桐 真里亜先輩に手を出すなんて」

「兎田 紳……くん」

私はその名前に驚いた。あの子が私の同級生の中で学年一イケメンって有名の男の子だなんて。それと妙にその名前に引っかかった。

私が保育園の時によく一緒に遊んでくれた男の子の名前もしんくんだったからだ。しんくんどんな姿になってるんだろう。私はそんなことを思い出し、物思いにふけた。

でもしんくんなんて名前はどこにでもあるよね。学年一のイケメンって言われる兎田 紳くんじゃないよね。

それにあのしんくんは公の場ではあんなことする子じゃないと思うし。

私はもう一度イチャついている2人に目を向けた。

「真里亜…」

「紳…。ちゃんとこっちに向きなさい」

「もう、これでいいだろ…」

2人の会話はどこか片桐先輩の指示に兎田くんが従っているような会話だった。兎田くんは嫌そうな顔を浮かべている。

「キスしなさいよ…」

「いやだ。…しない。頬にキスだけでいいでしょ」

と言って、兎田くんは傍から見てキスしているかのように片桐先輩の頬にキスをした。

そんな所を校門に入る瞬間まで見ていたら、兎田くんが私の視線に気がついたのか、目が合ってしまった。私は思いっきり、プイッと前に向き直って由美ちゃんのペースに追いつくように小走りに歩いた。