先生、恋愛を教えて。




「おー。頑張れ、美菜」


この日、初めて先輩に頭をなでられた。

この日を境に、先輩と今まで以上に仲良くなれたのは、わたしの気のせいじゃないと思う。


「あのさ、美菜。卒業式終わったら……」

「なんですか?先輩」

「いや、何でもない」


それからも先輩は時々練習を見に来てくれた。

そして、3月1日にあっさりと卒業してしまったのだ。


身近に大好きな先輩の音がなくて、最初は落ち込んだけれど……

でも、先輩とまた一緒に弾けることを夢に見て、それからもわたしは練習に励んだ。


こうして、今のわたしがいるけれど――

やっぱりわたしがお琴を弾くきっかけは先輩なんだなあと改めて実感した。





そして、演奏会まで残り1ヶ月になろうとしていたころ――

土曜日の夕方に、突然母が家にやってきたのだ。


「お母さん?どうしたの?」


母が家にやってくることなんて、今までなかった。

振り込みの要求のために、電話をかけてくることはあったけれど。


「ちょっと美菜に渡したいものがあって」

「え?なに?」

「これを使って」

「え?」