中2になって急に渡されるようになったバレンタインチョコ。
毎年市販のチョコをくれるが、有名メーカーのいいチョコレートなのだ。だから俺もちゃんとしたものを用意するようになった。
弘美の入れ知恵もあって、意味のあるものだが。
面白がりながらも、気にかけてくれているのがわかるので俺も一応の報告義務はあるだろうと思ったが、あからさまに憐れまれている顔と目が合う。

「ホワイトデーのお菓子に意味あるって教えてあげたの私だし?責任はないとも言えないけど?兄貴も兄貴で毎年さあ、狼煙(のろし)みたいな告白して、見事に伝わってないの見てるとさぁ。ちょっと可哀想になってきた」

両手で顔を覆って、シクシクと嘘泣きを始める。客観的に言われると恥ずかしくなり、俺は朝食の皿をシンクに持って行き、準備を整えた。

「…先行くから、片付けと戸締りはお前がやれよ」

共働きの両親なので、最後に家を出る人間が朝食の後片付けと施錠を確認するルールだ。

「ちょっと!!」

抗議する妹を尻目に手早くブレザーを着て、外に出る。

「周りくどいロマンチスト男ーーー!!」

妹の叫びを最後まで聞かずに玄関扉を閉めた。