君が助けてくれた夜

人によれば

これはスキップに分類されるのではないか

というくらい軽やかな足取りでお手洗いへ向かう



他の人の邪魔にならないように

鏡の前の左端のほんの少しのスペースだけを陣取って

必死にメイク直しや髪型を整える






「変じゃないよね、私」

鏡に映る自分を見て

何度整えても不安になる















鏡から離れて待ち合わせ場所へと向かう間

ドキドキしている自分を落ち着かせるために

「大丈夫大丈夫」と何度も

繰り返し心の中で呟いていた。



するとふと、自分の大丈夫という声に

シェフがあの時私に言ってくれた

優しい「大丈夫」という声が

重なったように頭の中で再生された
















「突然行ったら迷惑かな…」

シェフのおかげで今の元気な私がある

お店がガラス張りなのを利用して

外から料理しているところを一目見れたら

優太と会う勇気も出るんじゃないかと思った







「遠くから見るだけだから…」

そう言い訳をして

待ち合わせ場所への通り道から

少し遠回りになる

シェフのお店へと足を方向転換させた。