彼氏から今日は来れないと連絡があった後

何度か電話やメッセージを送ってみた。

電話には全く出ないから

何かあったのかと心配な気持ちもあったけれど

メッセージは全て既読無視だったから

単純に私に会う気がないのだと察するしかなかった。




彼のことを思い返してまた気持ちが落ち込んできた時




どんっと目の前に出来立てのポトフが置かれた

「ほら、食べてみ」

シェフは相変わらず無表情のまま

私にスプーンを渡した。

ポトフとスプーンを受け取った私は

小さくいただきますと呟いて

ホクホクのジャガイモを口に運んだ。





「え、美味しい…!!」

あまりのおいしさに

喜びの顔をシェフに向けると

シェフは少し口角を上げて私を見ていた。



ばっちりと目が合ってしまい

恥ずかしさのあまりすぐにポトフに視線を戻す。


それからなんだか顔を上げられなくて

ポトフを食べることに集中した。




温かい野菜とスープが

寒さと悲しさに曝された体に染み渡る。









“ゴトッ”

テーブルにお皿を置いた音がした。

隣を見ると

シェフが自分の分もポトフを用意して

座って食べようとしていた。



「え(笑)」

「へ?」

「え、一緒に食べるんですか?(笑)」

「ええ、何か」

営業時間中なのに

しれっと隣で食べ出すシェフに驚きと面白さを感じてついつい笑ってしまう

「まだ営業時間中ですよね?(笑)」

「ええ、そうですけど」

目は合わせて話してくれるものの

変わらぬ表情のまま隣でマイペースに食べるシェフは

良い距離感を保ちながら

孤独に寄り添ってくれているようで

安心を感じた。











「彼氏、最近全然会ってくれないんです…」

そして私は

この人なら大丈夫だと思ったのか

初対面であるにも関わらず

気付けば悩みをぽつりぽつりと話し始めていた。