君が助けてくれた夜


「もう、私のそばに居てくれる人は、
誰もいない、もう、誰からも、必要とされてないんです、」



泣きじゃくりながら

無理やり言葉を紡ぎ出す私を

シェフは手を止めてただじっと見つめていた








「顔だって、可愛くないし
コミュニケーションも、上手くないから、人望も、ないし
頭も、良くないから、仕事も、出来ないし
私には、なにも、ないんです」




「夢も、目標も、なくて、ただ、毎日たまたま、生きているだけの、私なんて、生きる意味な、んんんん!?」

‘’生きる意味ないんです”

そう言おうとしたのに

シェフに持っていたタオルで口を塞がれた





「んんんんん(なんですか)」

私が言葉になってない声で抗議すると

ようやく私の口元に当てられたタオルを

離してくれた

「ぷはぁ」





「生真面目に生き過ぎなんじゃない」

「え?」

「仕事完璧にしなきゃとか、職場の人と上手くやらなきゃとか思いすぎなんじゃない
だから心の拠り所がひとつ出来たら、そこに依存して、無くなったら崩壊する
もっと気楽に好きなことして生きてみなよ
本当はあるんでしょ?
自分のなりたい理想像」

「でも、そんなことしたら…」

「そんなことしたら、何?
仕事がなくなって生きていけなくなるって?
でも生きてる意味ないんでしょ?
じゃあ今あるもの全部捨ててゼロからやり直したっていいじゃん
それが上手くいかなかったって、今このまま生き続けてもどっちも同じ‘’生きてる意味ない”になるなら1回挑戦してみる価値はあると思うけどね
挑戦して、それで上手くいったら儲けもんだろ」


彼の言っていることはわかるけれど

実際に行動に移すとなると難しいわけで

現実、その挑戦が上手く行く確率なんて

僅かでしかないことも分かっている。



確かに、シェフの言う通り

今このまま生き続けても

ただ生きてるだけになる。

だけどもし、挑戦して失敗したら

ただ生きることすら難しいかもしれない

どちらも生きる意味はないけれど

このふたつには



無か

地獄か


この違いがあると思う




















そんな絶望的な二択を前に

返す言葉を失った私は

とてつもなく苦しんだ顔をしていたんだろう。

















「挑戦して、ダメだったら貰ってやるから」





















「え?」













シェフから衝撃の言葉を投げられた。