君が助けてくれた夜

気付けば雨は本格的に降り始めていた。














だけど今の私には

濡れることなんでどうでも良かった。






もう服も髪もかなり雨に濡れていたが

自分がどうなろうと

もうどうでもいい。





足元に落ちた雨が

側溝に流れていくように





私もこのまま流されて





どこかへ消えてしまいたかった。




























その時



「あんた、風邪ひきたいの?」




少し怒りの篭った声が聞こえたと同時に

私に降りかかる雨が止まった。












俯いていた顔を上げると

そこには今日私が会いに行こうとした

シェフがいた。









驚きのあまり言葉が出なかった私は

数秒の間、彼の顔を

ただ見つめることしか出来なかった。

















私たちの間には

傘が雨を弾く音だけが静かに鳴り響いた。

















何も話さず

ただ目が潤んでいくだけの私を見て

彼は呆れたのか

大きなため息をついて


「いくよ」


と私の手を掴み


強引に私をどこかへ連れ出した。



私が濡れないように常に傘で守りながら。