生憎、今日は化学の授業もなかったし、西園寺先生と出くわすこともなかった。

でもいつまでも上手に避けていられるわけがない。

…明後日には化学の授業もあるし。


どうしたらいいの、とひとりでに頭を抱えていると、「紡木さん。」と聞き覚えのある声が、階段からしてきた。


いや、まさか…
聞き間違いだよね。
考えすぎて幻聴でも聞こえてきたのかしら。


「やあ、紡木さん。」

「ひいっ!」


西園寺の姿が見えるなり、紡木は悲鳴を上げた。

そんな紡木を見て西園寺はケタケタと笑った。


「な、なな、な、なんです、か…!」


「いやあ、昨日は急に告白しちゃってごめんね。」


あっけらかんとそう言う西園寺の声が、廊下に響き渡ると、紡木は青ざめた顔であたりを見渡した。


そして西園寺ファンクラブ会員の姿がないことを確認すると、「もう!声デカすぎ!」と西園寺に怒った。


そう言う紡木さんの声の方がでかいでしょ…。


西園寺はそう笑いながらツッコミそうになったが、ぐっとおさえた。