「紡木さん、それって…。」



もしかして…



僕のこと…





「どこかで父から受けられなかった愛情を享受しようと必死なのかもしれないです。」

「えっ…。」

「一番身近な異性である父から愛情を受けられなかったから…だから今先生が私に向けてくれる愛情に必死なのかもしれないです。」


そう寂しげに呟く紡木に、西園寺は「そっか…。」と呟いて恐る恐る頭を撫でた。


紡木は驚いて身体をびくりと揺らしたが、身を捩って避けたりはしなかった。



好きな人の体温って、こんなにも心地よくて、優しくて、ドキドキするんだ…。



「これからもありがたく受け取ってよ。」


そう笑って言う西園寺に、紡木も「…はい。」と言って少し笑った。


暫く歩くと、気づけば紡木の家の前に戻ってきていた。