「あら、先生…相当お疲れですか?」
西園寺が保健室のドアを開けるなり、保険医はそう心配そうに言った。
「はは、お見通しでしたか。」
「ええ。クマもすごいし、顔色も悪いですよ?」
西園寺が苦笑いを浮かべながら入室すると保健医はベッドのカーテンを開けて、「どうぞ。」と西園寺を誘った。
西園寺は「ありがとうございます。」とお礼を言って、ベッドのカーテンを閉めると、布団に潜り込んだ。
文化祭準備による連日の激務に、他の男と楽しげに話す紡木さんの姿に、吉田さん僕をわざと2人きりにさせようとする紡木さん…全て重なって遂に立っているのも辛いほど疲れ切ってしまった。
せめて身体的疲労だけでも取ろうと西園寺は優しく目を瞑った。
暫くして保健室のドアが開く音が聞こえて、西園寺は目を覚ました。
「紡木さん…大丈夫?」
保険医の声に、西園寺の心臓は跳ね上がった。
紡木さん?
なんで?
そう思って飛び起きようとしたが、すんでのところで辞めた。
少ししてから隣のベッドから微かに啜り泣く音が聞こえた。
今度こそ西園寺は起きて、すぐに彼女の元へと飛んで行こうとした。
しかし、つまらない嫉妬心がそうはさせなかった。
なんで泣いているかは分からないけど、
…僕のせいで泣いてたらいいのに。
そう思ってしまうほど西園寺の心は疲弊していた。
暫くして保健医が席を外すね、とカーテン越しに紡木に伝えた。しかし、彼女は寝ているのか、返事がなかった。
保健医が出て行って少しした後、西園寺はゆっくり起き上がった。

