「つむちゃん、本当にありがとう!」
30分ほどして真っ赤な頬に潤んだ目をした由梨が、受付にいる紡木に手を合わせてそう言った。
「よかったね。」
紡木はにっこり笑ってそう返すと、受付の仕事を続けた。
「…あのさ、私今日、先生に告白しようと思う。」
「え…?」
突拍子もない瞳の言葉に、紡木は思わず驚きの声が出た。
「な、なんで急に…。」
「あのね、さっき先生に好きな人がいるかって聞いたら…私だって…。」
照れ笑いを浮かべながらそうゆっくりと打ち明ける由梨の言葉に、紡木の胸が嫌な高鳴りを覚えた。
西園寺先生が、由梨を…好き…?
『好きです、付き合って、いや、結婚してください!』
『僕はね、紡木さんのことが好きだよ。』
『…好きだよ、紡木さん。』
先生は、ずっと、私のことが好きだって…、
先生は一途な人だって、信じてたのに…
そう思った途端、涙が溢れ出そうになって由梨から目を逸らした。
「そ、そっか。頑張ってね。」
「うん、ありがとう、つむちゃん!中に戻るね。」
もしかしたら、私の知らないところでいつの間にか由梨ちゃんの事を好きになってたのかもしれない。
男性恐怖症で、付き合えるのかもわからない私なんかより、一途に見てくれる由梨ちゃんの方が良いって思ったのかもしれない。
これで良かったんだよ。
良かったはずなのに。

