西園寺先生は紡木さんに触れたい


「ケイト先生…いらっしゃいますか?」


由梨が化学準備室の戸を叩いて声を掛けると、少ししてから「はーい。」という声と同時にドアが開いた。



「吉田さん…と、紡木さん!」


紡木の顔を見るや否や飼い主を見つけた犬のように分かりやすくぱあっと表情が明るくなる西園寺に、紡木は苦笑いを浮かべた。


「何か用かな?」


ニコニコ笑顔を浮かべながらそう聞く西園寺に、由梨は思い切って「あの!」と話し始めた。


「あの、ケイト先生の連絡先、知りたいんですけど…!」


西園寺はその言葉に眉をハの字にして申し訳なさそうな顔をした。


「ごめんね。僕、生徒とは連絡先交換してなくて…。

一人と交換したら全員と交換しなきゃいけなくなっちゃうし、そうなると僕の携帯パンクしちゃうからさ…。」


そう言って眉を下げたままハハ、と笑う西園寺の言葉に、「そうなんですね…。」と心底残念そうに呟く由梨の後ろで紡木は一人気まずくて床を見つめていた。


「じゃ、じゃあせめて、先生のこと沢山知りたいから…これから一緒に昼食食べてもいいですか?」

「えっ!」


思った以上に積極的な由梨に、紡木は思わず顔を上げて彼女の背中を見た。

西園寺も少し驚いた顔をしていたが、すぐにニッコリ笑顔に戻った。