西園寺先生は紡木さんに触れたい


「あ、ここで大丈夫です。ありがとうございます。」


家の前に着くといつもと同じところで車を止めるように、西園寺に促した。


西園寺もいつもと同じように歩道側に車を寄せるとゆっくりと停車した。



「遅くまでお疲れ様。」

「先生こそ、毎日お疲れ様です。…じゃあ。」


そう言って車から降りようとする紡木に、西園寺は「待って。」と引き留めた。


紡木は少し驚いた顔をして西園寺の方を振り向くと、ばちりと視線が交わって見つめ合う形になった。


なぜか視線を逸らせず固まっている紡木に、西園寺もいつになく緊張した面持ちで紡木をまっすぐ見つめた。



「…好きだよ、紡木さん。」



幾度となく言われた好きの言葉も、いつもと違う声色のそれは今までよりももっと特別に聞こえた。


「えっ、あ、…さようなら!」


紡木は顔を真っ赤にして逃げるように車内を後にした。


な、何!?
私の心臓、おちついて!


聞いたことのない音を上げる心臓に、紡木は気が動転してマンションのエレベーターをスルーして階段を駆け上がった。