「怖かったよね。ごめんね…お母さんが、あんな人と結婚したせいで…紡木にも怖い思いさせて…ごめんね…。」


謝らないで、お母さん。お母さんは悪くない。
悪いのはあの人だ。


そう思って更に涙が溢れ出た。


ひとしきり泣いた後、母の提案で今まで電車で学校まで通っていたのを、暫くの間はバスで通うことになった。


「せっかく定期買ってるのに…勿体無いよ。」


紡木はそう母に抗議をしたが母はそれを跳ね除けた。


「そんなのいいのよ。お金より花奏が大事。

…それより、やっぱり病院に行こう?いい治療法があるかもしれないし…。」


「いいよ。病院なんて…今は就職活動で忙しいしさ。」


母は以前から何度か男性恐怖症を治す為に病院へ通うことを勧めてきたが、紡木はそれを断ってきた。


治る保証なんてないし、別に治らなくたっていいとさえ思ってる。通うんだとしても、自分で稼いだお金で通うべきだとも。