「その彼、浮気してるよ。」


「げっ!マジ?」


「うん、マジ。」


とある日の放課後。

人気のない屋上前の階段の踊り場は、いつも紡木 花奏(つむぎかなで) が『恋愛相談』を受け付けている場所。


今日も恋愛相談が舞い込んできて、それに応じているところだった。


「あいつ、一回しばいたる…。」


ゴゴゴゴゴ…と効果音が聞こえてきそうな程険しい顔をした相談者─遠藤葵(えんどう あおい)に紡木は苦笑いを浮かべた。


「つむちゃんありがと!今度ジュースかなんか奢るね!とりあえずあたしは蓮をぶちのめしてくるわ!」


そう言って彼女は短いスカートを振り乱しながら、走り出していくと、紡木はその背中に手を振った。


そしてそれが見えなくなると、こっそりため息をついた。



何でこんなことになってしまったんだろう…。