「私、物心ついた時から…

男性恐怖症で…。

男の人に触れると、気持ちが悪くなって、蕁麻疹が出て…今日みたいに気を失っちゃう事もあるんです。

だから、男性とお付き合いした事も本当はないし、好きになった事も、ないんです。

…だから、こんな私だから、

先生には悪いんですけど…
私、きっと、先生の気持ちには一生応えられないです。」


申し訳なさと自分の弱さを打ち明ける恐怖で紡木の目から溢れた涙は、頬を伝って、シートに虚しく染みていった。


西園寺は紡木の告白に、震える声で「…ごめんね、紡木さん。」と呟いた。


そんな西園寺に紡木は「なんで先生が謝るんですか。」と、返した。


西園寺は今までの自分の行いを思い返すと、激しい後悔と紡木に対しての申し訳なさが彼の胸を隙間なく埋めた。


僕の身勝手な行動のせいで、紡木さんをどれだけ傷つけてきたのだろう。


僕のせいで、紡木さんをどれほど怖い目に合わせてきたのだろう。


好き、と伝えられることさえも恐怖だったのではないのだろうか。