ずっと、気づかないふり。



「あー、彼氏じゃなくてもいいよこの際、」
と私が言ったところで ブー っと音がして。

『あ、塩沢春だ』 と紗良ちゃんの声がした。

予備校の時から幾度となく聞いた名前。
' シオサワシュン ' くん、さん。
一度インスタを見せてもらったことがあるから顔も何となく、本当にうっすらと覚えている。
普通にかっこよかったし、何より身長が高かった。現役で大学生。化学系(多分)。そして同い年。

確実に覚えているのは、
『ねえこのひとまたせふれつくってる』
結構遊んでること。紗良ちゃんを抱きしめたことがある。
今のメッセージも、たぶんせふれのお誘いだと思う。

へえそうなんだと思っていたら、
『ねえ音ちゃん、さっき彼氏じゃなくてもいいって言ってたよね』

「えっ?あーまあ、うん、別に、」

『春、どう?』

「……、どうって、私、その、顔可愛くないし、性格悪いし、とてもシオサワシュンくんさんのお友達になれるような女では無いので……ゴメンナサイ」

『そっかぁ。まあ、気が向いたら言ってね。春に連絡するから』
あと、音ちゃんかわいいからね、と言ってスマホをポケットにしまう。

ちょうど駅に着いて、次は紗良ちゃんの地元で会う約束をして、『またね』をする。
さっきの ' また ' は、結構近い。