夜も布団に入りながらずっと彼女について考えていた。
 夢の世界に入る直前、ふわりと頭の中に過去の映像が浮かんできた。

 保育園に通っていて、年長の時だった。

 運動会の日、泣いている年中の女の子がいた。走って、転んでしまったらしい。

膝が擦りむいていて痛そうだった。気になって見ていると、その子は先生に手当てをされていた。その後もしばらく泣いていた。俺は彼女を見ていると、妹が泣いている時のような気持ちになり、近くに行った。

 そして「なおれーなおれー」と、おまじないをかけながら頭をぽんぽんした。すると彼女は泣きやんで、きょとんとして目を合わせた後、うつむいた。

 記憶の子と、あの子が重なった。

 目が合い、あの、顔を赤らめた瞬間の彼女の顔が特に。

 当時の他の記憶はあまりないのに、この事は鮮明に覚えていた。

 小さい頃におまじないをかけたのも、もしかしてあの子かなぁ?
 そうだとしたら、本人は覚えているかな?

 実は同じ子じゃなくて、別の子で、勘違いかもしれないけれど。

 彼女が元気な時に、一度ゆっくりと話をしてみたいと思った。

 あっ、そうだ。
 あの子眠れないって言ってたな――。

 寝不足だと授業も集中出来ないだろうし、頭も痛いみたいだし、辛いよなぁ。