小雪ちゃんからの手紙を読んでみた。

『アロマ、ありがとうございました! とても良い香りで癒されて、眠れるようになった気がします。あと、おまじないもありがとうございました』

 役に立てて、良かった! 

 あれから小雪ちゃんは、保健室によく来るようになった。先生もいる時には三人で世間話とかして、ふたりきりの時には

「頭が痛くて、いや、嘘なんですけれど。ただおまじないをして欲しくて」

 なんて、頭を俺の前に出しながら、頼んでくるようにもなった。しかも冗談まで言うようになって。最初はあんなに俺の事を怖がっていたのに。

 小雪ちゃんの事を考えるだけで自然に笑みがこぼれてくる。

「なおれー、なおれー」

 して欲しそうな時には、いつでも全力でおまじないをかけた。かけた後に見せてくれる、彼女のはにかみ笑顔が可愛かった。

***

 その日もいつものように、お願いをされて、おまじないをかけようとした。

「なおれー、なおれー」

 いつものように、頭をぽんぽんとした。

 いつも以上の事をしたくなった。
 気持ちを伝えたくなった。

 頭に乗せた手でそのまま頬をさわった。

 彼女は驚いてビクッとし、俺の目を見つめてきた。
 俺も彼女の目を見つめた。真剣に。

「小雪ちゃん、好き」

 彼女の目は見開き、視線を横に向けた。
 唾を呑み込む音が聞こえてきた。

 それから再び目を合わせてきて、彼女は俺に最高の言葉をくれた。

「私も、好きです」

 居心地の良い保健室に小雪ちゃんがいる。会う度に彼女からはラベンダーの香りもほのかに漂っていて。

 ――好きに囲まれたこの時間が、永遠に続けば良いのに。