次の日の昼休み、保健室を覗いてみた。
 赤西先輩がひとりでいた。

 こっちから話しかけるの、緊張する。

 今日は頭が痛いとかじゃないけれど、保健室にいる先輩に用事があるから大丈夫。

 よし!

 深呼吸してからドアを開けた。
 
「こんにちは」
「あ、どうしたの? 頭痛い? 大丈夫?」

 私が声をかけると、先輩は私の体調を気にかける言葉をくれた。

「あの、違くて……」

 鞄の中からお礼の手紙と洗濯したハンカチを出した。写真も……って思ったけれど、やめた。

「あの、お聞きしたいことがあるんですけど……」
「何?」
「おまじない」
「おまじない?」
「はい、おまじないっていつもしてるんですか?」

 質問、変だったかもしれないと思った。

「あ、俺も聞きたかったんだけど、もしかして、俺、小さい頃、小雪ちゃんにおまじないした事ある?」

「えっ?」

「いや、もしも俺の勘違いだったら、変な質問して、ごめんね」

「あ、あの!」

 鞄から写真を出した。

「この時の、私の隣にいる人、先輩ですよね?」

 先輩は目を細めながら写真を見た。

「わっ! これ俺だ。しかも懐かしい。保育園の運動会だっ!」

 やっぱり先輩だったんだ。
 先輩はその写真をまじまじと見ていた。

「あの時の、やっぱり小雪ちゃんだったんだ」

 ん? その言い方。
 もしかして先輩も覚えていてくれたのかな?

「この時、小雪ちゃんにおまじないかけたんだよなー。小雪ちゃん、転んじゃったんだっけ? 膝怪我したんだよね? 確か」

「はい、そうです」

 まさか、先輩がここまで鮮明にその時の事を覚えてくれていたなんて。

「俺、小さい時の事、あんまり覚えてないけど、これは覚えてるんだよなー」

「私もです」

「よく分かったね、これが俺だって」

「こないだしてくれたおまじない、懐かしい気がして、もしかしてって思ったんです。そしたら写真の中に先輩がいて」

 あの時の、凄く優しかったお兄さんは、赤西先輩だったんだ。

 見た目とか、怖いなって思っていたけれども、今もこんなに私の体調を気にかけてくれて、物凄く優しい!

 話をしていると、昼休みが終わってしまう時間になった。

「また、来ますね!」

 そう言って、私は手紙とハンカチを先輩に渡して、教室に戻った。

 先輩はよく保健室にいる。優しくて白いイメージの保健室、なんだか先輩みたい!
 先輩は保健室がよく似合う。