夢みる少女は、寂しがり詐欺師に騙されない。


「みんな夏じゃないのに
なんで海来るんだろうな…」



「ウサギが行こうって言ったからでしょ」



「オマエも行きたいって言ってたよね?」



「アレは、夏ね
そしたらウサギ
海は1年中行けるって言ったでしょ」



自分が言ったクセに



「たぶんさ
オレの憶測だと
みんな好きな人と来てるんじゃね?

そーじゃなかったら
夏じゃない海なんか来ないだろ」



「え?」



周りを見たら

カップルばっかりだった



カップルかわからないけど

みんな男女だった



私とウサギも

カップルではないけど



ん?

好きな人?



ん?

そう言ったよね?

ウサギ



「なんか、みんな楽しそうだね」



ウサギがすれ違う人達を

羨ましそうに見てた



「天気いいね」



私は空を見て

伸びをした



「いいな…みんな手とか繋いで…」



私となんか来ないで

カノジョと来ればいいのに…



「ウサギ、海キレイだよ!」



カップルばっかり見てないで

海を見なさい!



「あ、今チューした」



見すぎ!



「平日でも結構人いるんだね!
私達ぐらいかと思った
みんなサボりかな?」



「みんなイチャイチャしてんじゃねーよ」



自分だってすればいいのに…

カノジョと



「日焼け止め塗ってくればよかった」



「あ…こっち歩きなよ」



ウサギに引っ張られた



ウサギの影に

私を入れてくれた



え…



手が繋がれてた



「あ、ありがと
転ばないから、大丈夫だよ」



ウサギの手から

さりげなく逃げた



「繋ぎたく、なかった?」



「え…」



「オレ、繋ぎたい

オマエと海、来たかった」



「え…
カノジョと繋げばいいでしょ!
ウサギ、カノジョいるんでしょ?
みんな言ってたよ!」



「は?カノジョ?
いねーし…」



「バイト先じゃないかって
みんな噂してたよ!」



「バイト先?男ばっかだし…」



「夏休み、合コンも行ったらしいじゃん!」



「人数合わせで行ったけど
ひとり来れなくなったとかで
結局オレ余るからすぐ帰ってきたし…」



「え!それ、私かも…
誘われてたけど入院してて行けなかった」



「オマエ、合コンとか行こうとしてたの?」



「私だって人数合わせで呼ばれただけだし!」



「オマエ、カレシほしいって言ってたもんな
いつも口だけなのに本気だったんだ」



「だから、ホントに人数合わせだって!」



「やっぱり口だけなんだ」



「口だけじゃないよ
ほしいよ!
私だってカレシ…」



アレ?

作る気なかったのに…



ホントは

欲しかったのかも



ただ

いつどーなるかわからないから

作れなかった



「オレじゃ、ダメ?

オレじゃダメなのかよ?

合コンなんか、行くなよ」



「え?ウサギ?
え?なにが?」



話が読めない



「だから!
オレがカレシじゃダメかって…」



「え…」



「さっきからオマエ
オレの話から逃げてたよな?

オレだって
カノジョほしいし…

ダメなの?
オレがカレシじゃ?

ダメなの?
オレのカノジョじゃ?」



なにコレ?



告白?



まさか…



またウサギは

私の夢を叶えてくれようとしてるのかな?



なんで?



なんで私の夢なんか…



そのために

私と付き合うとか



無理にそんなことしなくてもいいよ



ウサギは…

私は…

ウサギが…

ウサギじゃ…



いろんなことが

頭をぐるぐる回った