「走って、大丈夫だった?」
電車の中
ウサギが息を整えながら言った
「…なん、なの?…朝から…」
「海行きたいって、オマエ、言ってたじゃん」
「言ったけど…」
もぉ
どーでもよくなって
窓から景色を見てた
ウサギに
さっき掴まれた手が
熱い
「今日は髪結んでないんだな」
ウサギが私の髪を触った
「うん、今日はミチュじゃない」
「いい匂い…」
ウサギが私の髪に顔を近付けた
なに?
このドキドキは
さっき走ったからかな?
「もぉいいかげん美容院行かなきゃ」
そう思ってたけど
なかなか行けなかった
「切るの?」
「うん
ウサギは長いの好きなんだっけ?」
そぉ
ウサギがそぉ言ってたから
たぶん
なかなか切れなかった
「いや…ただ、ミチュじゃなくなるな…って」
「そっか…
男の人って、長い方が好きなの?」
「んー…
そーなのかもね…」
ホントは
男の人じゃなくて
ウサギ限定で聞きたかった
ウサギのカノジョは
長いのかな?
「オレは長さ関係なく
女の子が髪を耳に掛ける仕草が好き」
私が髪を耳に掛けるのと
ウサギの声が同時だった
「え…」
あ、女の子ね
女の子がね
「え?」
目が合って
なぜか咄嗟に
耳に掛けた髪をおろした
「とか…
髪を結ぶ仕草とか…」
すぐ近くで聞こえるウサギの声に
「短い髪を無理矢理結んでるカンジとか…」
ドキドキする
「へー…」
なに?
それって…
私じゃないよね?
なんて
自惚れてる
な、訳ない!
絶対ない!
女の子じゃないから
私
「それって
好きな人限定じゃない?」
好きだから
そぉ思うんだよ
「あー…そーかも…」
だから
私じゃないって
ウサギは今
きっとカノジョを思い浮かべてる
「好きな人がしたら
きっとなんでもいいな…って
思うんだよ」
「そーかもね…」
そんな話をしてたら
海が見えてきた
「海だ!」
「海が見えると
だいたいの人が、海だ!って言うよね」
「うん、そーだね…
スミマセン」
「うん、期待を裏切らないでくれて
ありがと」



