講義が終わってから
ウサギの家に寄った
「おじゃましまーす」
「どーぞ…狭いけど…」
床にある物を退けながら
ウサギが言った
水色のアパートの1階
1番奥
玄関の靴を見た限り
部屋の様子を見た限り
家族とかいなそー
「え、独り暮らし?」
「うん、まぁ…実質ひとり」
携帯会社のややこしいからくりみたいな言い方
やっぱり詐欺?
「いいな
私、独り暮らしするの夢なんだ」
「すればいいじゃん
そんなことぐらい
夢でもなんでもないだろ」
「うん、でも、家族がダメって言うから…」
「へー…家族ね…
まぁ、オマエも一応女の子だしね
心配なんだろうな…」
そう
心配なんだ
独り暮らしは絶対ダメ
だから
家から通える大学を選んだ
私にとっては
そんなことぐらいじゃなくて
なかなか叶えられない夢なんだ
「独り暮らしの男の家に女ひとりで来るとか
そーゆー心配はないの?」
「え?」
「自己責任て言ったよね?」
「え?」
「意味わかんない?」
「え?」
「わかんなそうだね
なら、いいや…
…
あ、約束のお菓子」
ウサギがダンボールを指差した
「えー!こんなにいいの?」
ダンボールでお菓子買うとか
初めて
大人買いってヤツだね
「とりあえず、1箱24個入り
それで当たりが出なかったら
もぉ1箱買ってやる
当たりが出るまで買ってやる」
「えー、いいの?ありがと!」
「オマエに詐欺師とか言われたくないし…
それだけあれば当たるだろ
当たりそうな気する
や、絶対あたるだろ!」
バカにしたけど
ちゃんと買ってくれた



