夢みる少女は、寂しがり詐欺師に騙されない。


「手作りカレー久々に食べた」



初めてかも

人に手料理食べさせたの



誰かのために料理したの



「どぉ?人参わかる?」



「んー…わかんないかも…」



「よかった!」



「うちにミキサーなんかあったっけ?」



「ないよ
すりおろし器もなかったし
全部包丁で細かくしたから
すごい手が痛くなった」



「指、切ったの?」



ウサギが私の絆創膏を巻いた指を見た



気付かれた



「うん、ちょっとね
カレーに指は入ってないから安心して!」



「オレのために、ごめん」



ウサギが私の指を掴んだ



「私が料理下手なだけだから
気にしないでよ
あ!おかわりもあるよ
残りは冷凍しておくね!」



「ありがと
うまいよ、カレー」



「ホント?
同棲したらカレシにも作ってあげよ」



「同棲?カレシ?
誰の話?」



「ん?私の話
私、カレシと同様するの夢なの!」



「またオマエの夢の話かよ」



「うん、だって夢だもん」



「カレシすらいねーじゃん」



「だから夢だって言ってるでしょ!」



「どーせ、カレシだって同棲だって
ホントに夢で
叶うことなんかないかもな…」



「うん…
そーかもね…」



叶うことなんかない



ホントのことで

悲しくなった



ホントは私

カレシなんて

作る気ないし



同棲ももちろんできない



言ってることは

誰かの死ぬ死ぬ詐欺と同じだ



「なに暗くなってんの?

あ、オレと同棲する?
オマエ、ここに住めばいいじゃん
毎日カレー作ってよ
独り暮らしも夢なんだろ
一度に2個夢叶っちゃうじゃん」



それは

バカにしてる?



からかわれてるよね?





「どーせ叶わないよ
どっちも叶わない

同棲って大好きなカレシとするものだし
ウサギいたら独り暮らしじゃないじゃん」



「それはつまり…
オレのことは大好きじゃない」



「ん?…うん…うん!」



「オマエ、ハッキリ言いすぎ

オマエの口だけの夢には
もぉ付き合ってらんねーよ」



口だけ



うん、そーだよ



自分でも

わかってるけど…



ウサギに

私の何がわかるの?



ウサギに言われた事に

イライラした



「私、帰る!」



最後の一口

カレーをいっきに口に入れた



「ごひほうさまでした」



口にカレーが入ったまま

立ち上がってバッグを持った