夢みる少女は、寂しがり詐欺師に騙されない。


「ねぇ、ウサギ
もぉ今日はお菓子食べるのやめなよ
虫歯になっちゃうよ」



「オマエが早く食べないとぐちゃぐちゃになる
とか言ったんだろ!

そもそもオマエが当たりが出るの夢
とか言うから…」



「じゃあ、夢諦める

諦めるから…もぉいいよ」



「そんな簡単に諦められる夢なのかよ?」



「諦めるのも叶えるのも
どっちも簡単じゃないよ

ウサギが
甘いの食べすぎて虫歯になるかもだし
もしかしたら糖尿病になるかもしれないし
バイトだってその為にしてるわけじゃないし

私の夢ために無理させたくない

だから、もぉいい

ウサギが心配だから…」



心配だよ



心配してる人

ちゃんといるよ



「親譲りかよ!
その心配症」



「そぉかな?」



「人に心配されるとか
スゲー久しぶりな気がする

慣れなくて、なんか気持ち悪い」



「気持ち悪くてごめんね
でも、心配だから…」



「心配しなくていいよ
オレ、どーせ死ぬから…」



また始まった

死ぬ死ぬ詐欺



イラッとして

つい言ってしまった



「ふーん…
じゃあ、死ねばいいのに!
そーゆー人は、きっと地獄に行くんだよ!」



「ハハハ…
地獄ってどんなところなの?」



死ぬのに

よく笑ってられるね



「ここは涼しくて天国だから…
きっと…
きっと、暑くて…

ホントに心配してくれる人なんか
誰もいなくて…

ひとりで寂しくて、苦しんじゃない?」



「オマエも一緒に行く?」



は?

なに言ってんの?

この男



「行かない
絶対、行かない!
パパもママも悲しませたくない!」



ひとりで行けばいい!



なんて…



一瞬思ったけど



「やっぱりダメだよ

死んだら…ダメだよ…

行ったらダメだよ…ウサギ…」



気付いたら

興奮して

ウサギのすぐ前にいた



膝を抱えて座ってるウサギは

すごく

とても

小さく感じた



目の前にいる

この詐欺師を



抱きしめたくなった



きっとこの人は

死にたいんじゃなくて…



誰かに抱きしめてほしんだろうな



ウサギに手を伸ばそうとしたら

先にウサギの口が動いた



「オマエ…

ウザいし
なんか気持ち悪いこと言うけど…

やっぱり、かわいいな」



ウザい?

気持ち悪い?

かわいい?



は?



ナメてんのか!



我に返って

ウサギから離れた



抱きしめたくなった気持ち

撤回!